メモ帳がわり
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DATE: 2013/09/08(日)   CATEGORY: 未分類
いつか使いたい中学生日記没
まあ没だよ。
使うかもしれないけれど。

 中身のない挨拶と一緒に先生が出ていくと、教室は俄然活気づいた。部活だったり、放課後の約束だったり、はたまた塾だったりと中学生っていうのは忙しい。
 わたしはぺったりと机に伏せ、首を傾げて外を見ていた。ひと月前まで生命力の塊という感じに生い茂っていた校庭の植樹は、端の方から少しずつ色を褪せはじめている。鱗雲が広がる空は、真夏のコバルトよりも幾分色が薄くなって見えた。
 わたしはこのくらいの季節が好きだ。どっちつかずに主張が強くなくて、なんだか安心する。窓越しにぼんやりとラッパの音が聞こえた。気の早い吹奏楽部の練習かもしれない。
「日比野ちゃあん」
 ラッパに似た間延び具合で声がして、わたしはのっそりと顔を上げた。前の席から横向きにこっちを振り向いているのは安藤だった。手には色つきリップとラメカバーの手鏡。多分百均のやつだ。
「なんか落ち込んでる? どしたの?」
語尾の伸びた甘ったるい声で安藤がのぞき込んでくる。くるりと上げたまつげとピンク色の唇。安藤は愛嬌がある。顔も頭も。
「安藤に言ってもしょうがない内容だよ」
「なにようそれ!」
「じゃあ言うけど」
 わたしはようやく体を起こした。下敷きにしていたプリントには折り目が付いている。
 「コレ、今回の英語のテスト。学年平均47点だったっしょ」
 「ん、あれはセンセが鬼畜だった。あんなのわかんないよぅ」
 「それで東がさ。75点だったんだよね。ちらっと見えちゃった」
 「え! うそぉ。あたし32点だったよ」
 それはヤバイんじゃないっていう言葉を飲み込んで、目を丸くした安藤の頭をよしよしと撫でる。整髪剤でちょっと手触りが悪かったが、安藤は室内犬のように目を細めて気持ちよさそうにした。
 正直、こんなに点数が悪いとは思っていなかったのだ。小学生の頃、テストは悪くなかった。わかると楽しくて、机に向かうのが苦じゃなかった。塾なんか行ってなかったけど、授業はワクワクしたし宿題を出して褒められるのが嬉しかった。
 状況が悪くなりはじめたのは、中学生になってからだ。ひとつにつまづくと、ドミノ倒しのようにどんどんわからなくなる。わからないと辛くなってやる気がなくなる。悪循環だ。
 それでも机に向かう癖だけはちゃんと根付いていた。机に向かって勉強したにも関わらず、点数が取れないことが情けなかった。
 「東、夏期講習行ったんだって」
 「えー! せっかくの夏休みなのに。バカじゃない」
「テストの結果だけ見れば馬鹿なのはうちらじゃん。なんか焦っちゃってさ。塾行きたい訳じゃないけど、部活もしてないし、彼氏がいるわけでもないし」
「そっかあ……じゃあなんかする?」
「なんかって?」
「とりあえずマックにいって相談しようよ。ポテト食べたい。あ、あと泉先輩の誕生日、なに渡すか相談したい!」
「そういう内容と思ったよね」
 泉先輩は安藤が現在ご執心の先輩だ。さり気なく手を貸すのが上手で、下級生に人気がある。プレゼントを渡して告白する妄想を語りだした安藤の背中を叩いて昇降口へと向かう。
 「焦ったってね。いつもと変わらないじゃん」
 肩をすくめて文句を付けたって。フニャフニャした顔で笑っている安藤を見てやっと息を楽にできたのも、わたしの真実なのだった。



 女子中学生っていうのは、無敵なもののひとつだと思うのだ。

 休み時間、いつもの仲良しメンバーに「サキー、トイレ行こ」と誘われた。日比野キサキだからサキ。付けてもらったあだ名は本名より可愛い響きで気に入ってる。
 ワックスが下手だったのかスリッパの跡が残るリノリウムの床の洗面室。横並びに並んで鏡の前を陣取った。女の子が休み時間にトイレに集まる現象って“あるある”過ぎていっそ正式な学術名があるんじゃないかと思う。仲良しメンバーっていうのは、チエちゃんと安藤とミッコのこと。うちのクラス、二年三組のなかでわたしが一番仲良くしてる四人組だ。チエちゃんとミッコが背が低い組で、安藤とわたしがどちらかと言えば高身長組。わたしたちの中で安藤だけは処女じゃないので全員から一目置かれている。
 「今日さ、ハゲ山にスカートの長さ怒られたんだけど。あたしそこまで短くないよねー」
 「チエちゃん今スカート何回曲げてんの? ちっちゃいからスカート短いほうが似合うもんね」
 「ハゲ山がエロいだけじゃない? それより生理来ちゃった、誰かナプキン持ってる?」
 「羽なしと羽つきどっちがいい? タンポンもあるよぉ」
 「ヤダ、タンポン怖いもん」
 「使い方教えてあげるってぇ」
 男子には聞かせられないあけすけな会話をしながら、わたしたちは服装や髪型を念入りに弄った。わたしの通う中学の制服は、襟と袖口、スカートがグレーのセーラー服。袖口と大きな襟の裾に二本白いラインが入っていて、スカーフじゃなくてリボンを留める。数年前にデザイナーに頼んで新しくしたらしくて、なかなか可愛いと評判だ。十月過ぎてから中間服になったから、寒くなってきたらベージュのカーデをセーラーの襟を出して着るのが正解。黒だとちょっとギャルっぽいっていうのが皆の意見。スカート丈も黄金律があって、ウエストのところをクルッと巻くように3回から5回くらい曲げる。身長がちいさいと足を出したほうがバランス良くなるから、チエちゃんはベルトで上げてる。
 靴下もこだわりがあって、白ソックス、黒ソックス、もうちょっと寒くなれば黒タイツ。運動部だとくるぶしソックスの子もいるけど、わたしたちはみんな黒ソックスだ。可愛いワンポイントが付いているのを見つけると情報共有したりする。
 髪型はミドルレングスか、ロングならストレート。暑いときには手首の大きなシュシュを使ってポニテにする。
 制服はわたしたちの鎧だ。校則に乗ってない細かな決まりで周りに迎合し同和する。暗黙の了解がわからない、空気の読めないやつは村八分にされるのみ。
 安藤が下まぶたに付着しているマスカラを拭き取るのを見ていたら、鏡越しに目があった。
 「サキはテスト何点だったぁ?」
 「さっきの? 確か72点だったよ」
 罠のように突然発生する抜き打ちの小テストは、まあなかなかの出来だった。可もなく不可もなくってところだ。
 「テストと言えば、さ」
 ミッコがあぶらとり紙をクシャクシャにしながら言う。
 「私の隣の席のさ、東っているじゃん。バド部のバカ」
 「うん、バド上手いらしいね。普段めっちゃ地味なメガネ君だけど。あれ?もしかして」
  安藤はパチパチとまつげを瞬かせて、不穏な感じに笑った。テンションが上がったとき、安藤は目をまばたきをしてぱっちり開ける癖がある。
 「もしかして恋バナ? とうとうミッコに春が」
 「ちがうから。あのね」
 
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